2022.04.24 Sun

レポート:オンライントークイベント〈地域の企業と学校とのつながりを考える -サントリーが届ける次世代環境教育「水育」-〉

2021年10月24日(日)に開催した、オンライントークイベント〈地域の企業と学校とのつながりを考える-サントリーが届ける次世代環境教育「水育」-〉のレポート。

・「水と生きる」企業として「水」をテーマに世の中に貢献する。

・「森と水の学校」や「出張授業」で、子どもたちに自然の素晴らしさや、水の大切さに気づいてもらう。

・規模に限らず、地域視点で地元の企業とコラボレーションしてほしい。

2021年10月24日(日)、サントリーホールディングス株式会社様より、小林章浩様、市田智之様のお2人をお迎えし、原口直先生(東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー)の司会で実施された、POWER FOR TEACHERSでの2回目のオンライントークイベント〈地域の企業と学校とのつながりを考える-サントリーが届ける次世代環境教育「水育」-〉。サントリーが行う次世代環境教育「水育」の取り組みをご紹介いただき、企業と学校との連携について考えた1時間について、レポートを公開します。
冒頭では、司会の原口先生より今回のテーマ設定についてお話がありました。原口先生は、新学習指導要領に導入された「生活や社会との関わり」について、音楽科の授業内で考えた時、ベートーヴェンを通して現代の今日的課題について気づかせる授業を行えないかと思い、CSR(企業の社会的責任)をキーワードに、なぜサントリーや他の企業がホールやオーケストラを持つのかその理由を考えさせる授業を行なったそうです。そこからの繋がりで今回サントリーホールディングス株式会社様をお招きし、イベントを開催するに至ったそうです。

サントリーの歩みと、次世代環境教育「水育(みずいく)」

サントリーホールディングス株式会社の小林章浩様、市田智之様のお二人から「①サントリーの企業紹介と次世代育成活動の取り組み」についてと、「②次世代環境教育『水育』について」それぞれお話しいただきました。
まず小林様から、サントリーの歴史を軸に、サントリーが掲げる理念や、具体的な事業展開についてお話しいただきました。サントリーは、今や世界中にグループ企業を持つ日本有数の飲料・酒類の総合食品メーカーです。創業時から受け継がれている精神に、「やってみなはれ」と「利益三分主義」があるとのこと。「やってみなはれ」は、現状に満足することなく、絶えず成長する企業でありたいというチャレンジ精神を表した言葉です。「利益三分主義」は、食品メーカーとしての高品質の商品・サービスの提供に留まることなく、真に豊かな社会実現に寄与する企業でありたいという思いから、事業で得た利益を世の中に還元していくという志を表しています。後者の「利益三分主義」の価値観が、サントリーがサントリーホールをはじめとする芸術・文化への貢献やその他CSR活動の展開につながる大切な精神になっているそうです。またサントリーでは、その時代ごとの社会課題について取り組んできた流れがあるとのこと。例えば高度経済成長の頃、モノは豊かになったが、人の心の豊かさが置いてきぼりになっていたとき、何か人々の心の豊かさに資することができないかという思いから、サントリーホールやサントリー美術館など芸術・文化の振興への取組みが始まったそうです。
サントリーが考えるサントリーらしさの根幹は「水」にあるとのこと。サントリーの全ての製品は自然の恵みで作られており、また製品作りも良質な水を探すところから始まっているそうです。そこから、サントリーでは2005年より「水と生きる」というメッセージを策定しています。このメッセージには「①自然への思い〜水とともに生きる〜」、「②社会への思い〜社会にとっての水となる〜」、「③わたしたち自身への思い〜水のように自在に力強く〜」といった意味が込められています。このうちの「②社会への思い」として、文化・社会貢献活動を推進しており、ホール・美術館などの文化施設の運営、社会福祉施設の運営、学校の運営のサポート、大規模災害における復興支援活動やチャレンジド・スポーツ(障がい者スポーツ)の支援などもおこなっています。それらの運営や活動の中で、さらに次世代育成の取り組みも展開しており、それが今回のキーワードである「水育」の活動につながっているそうです。
 
続いて市田様からは、「水育」の活動についてご説明いただきました。「水育」は、子どもたちが、自然の素晴らしさを感じ、水や、水を育む森の大切さに気づき、未来に水を引きつぐために何ができるかを考える、次世代に向けたプログラムです。具体的な取り組みとして、「森と水の学校」と「出張授業」があります。
「森と水の学校」では、全国にある「サントリー天然水」のふるさとで行われる親子を対象とした自然体験プログラムです。2004年からスタートしたこのプログラムは、小学校3〜6年生とその保護者を対象に実施されており、実際に自然に触れることで、水の大切さや、水を育む森や自然の大切さを体験します。「サントリー天然水」のふるさと(白州・奥大山・阿蘇)の自然の中で実施する白州校・奥大山校・阿蘇校と、自宅からオンラインで参加できるリモート校もあるとのことです。
「出張授業」は、学校にサントリーから水育講師を派遣し行うアウトリーチ的なプログラムです。社会科や理科等で水に関する単元が出てくるタイミングである小学校4,5年生を対象とし、1時間目を担任の先生が担当し、2時間目を水育の講師が行う流れとなっています。担任の先生の担当する授業では、サントリーより提供される教材を用いて授業を進めます。今回ご紹介いただいた教材は「水の旅をするすごろく」です。水になったつもりで、水がどのように循環していくのかを遊びながら学びます。これらのワークを通して子どもたちに、「私たちは水循環の中で生活している」ということを学び、水は地球を旅していること、私たちの生活は水循環に影響を与えていることへの気づきにつなげるねらいがあるとのことでした。さらに、GIGAスクール構想の状況に対応し、学校と家庭をつなぐ実践的な学びをサポートする仕組み作りも行っているそうで、「出張授業」では自宅に帰ってからも復習ができるようにホームワークアクティビティを開発されたとのこと。より興味を持った子どもたちが、自ら作成した水に関するレポートや写真などを自由に発信できる場も作っており、現在では海外からの投稿も閲覧可能になるなど、学びの場が広がっているそうです。
それぞれの取り組みは、コロナ禍学習環境にも対応されているそうで、コロナ禍前はグループワークとして使用していた教材も、個人ワークでもできるようになっているそうです。さらに、「森と水の学校」「出張授業」とも、オンラインコンテンツとしても開発を行い、一方的な講座にならないよう、オンラインを駆使して双方向コミュニケーションが行えるようにされているとのことでした。オンライン対応にしたことにより、今まで現地に赴かないと参加できなかったプログラムにも、全国から参加者がアクセスできるようにもなった利点があったそうです。
なおこれらのプログラムは無料で申し込みができるとのこと。ご興味をお持ちの方は、サントリー次世代環境教育「水育」のホームページをご覧ください。(https://mizuiku.suntory.jp

グループワーク〜地元の企業に、学校にどのように協力してもらうか〜

イベント終盤には、Zoomのブレイクアウトルームの機能を用いて、グループワークの時間が設けられました。参加者をランダムにグループ分けをし、「地元の企業に、学校にどのように協力してもらうか」をテーマに10分間のディスカッションが行われました。ディスカッション後は代表して2つのグループに話し合った内容を共有していただき、最後にサントリーのお二方からコメントもいただきました。2つのグループの発表内容は以下のとおりです。
 
グループ1
発表者:K先生(青森県)
こちらのグループでは、まず企業がこのような取り組みをされていることを新鮮に見ている声があった。グループには、長野県、新潟県、愛知県の先生方がいらしたが、愛知では自動車のトヨタやホンダの工場見学、新潟ではお菓子の亀田製菓の工場見学などを行なっているという話が出た。一方で、青森には他県のような大きな企業があまりないが、例えば、白神山地に近いところに、ブナの加工を行うBUNACOという会社があり、そことコラボレーションして、人工林ではなく原生林を守る取り組みを行なってみるのはどうかな、と考えた。今後の学校と企業との連携の方法を考える機会になった。
 
グループ2
発表者:M先生(東京都)
大きな企業はなくても地元の地域の魅力をもとに考えられたらいいなという意見が出た。自身は葛飾区なので、なるべく企業側に負担のかからない方法で、町工場などに誇りを持てるような取り組みができるのでは、と思った。また今はオンラインでもいろいろな出前授業ができるので、企業の大小にかかわらず色々な取り組みが広がるといいと思う。
 
グループの発表についてサントリー様からのコメント
市田様
我々もオンラインを含め手探りで行ってきた。出張授業は実際にやってもらった先生方からとても関心を持っていただいており、転任されてもまた転任先の学校で出張授業を行っていただくこともある。今回、オンラインではあるが直接先生方にお話しできたことは貴重な機会であった。行政を通じて紹介させていただくこともあるが、やはり学校の先生方が面白いと思って取り組んでいただくのが一番だと思う。K先生のグループでもお話があった森を守る活動も、実際に奥大山の方では地元の小学生にブナの苗木を渡して育ててもらい、高学年まで育てたら森へ帰すという活動をおこなっている。先日その活動を行なった第1期生が成人した際は、祝いとして育てたブナを使ったタンブラーをプレゼントした。地域に根付いた取り組みもとても大事だと思う。
 
小林様
規模に関わらず地域ごとに色々な企業が様々な取り組みをされていることは間違いないと思う。是非とも企業のホームページを見て、それぞれの取り組みにアクセスしてほしい。加えて、今の時代は「地域」という言葉は大きなキーワードだと思う。その点でも、地元企業と地域視点で色々な取り組みを行なっていただけるといいのではないか。またコロナ禍を背景に、リアルだけでなくオンラインでの広がりも手応えを感じている。リアルとオンラインのいいとこ取りをし、ハイブリットな形でも進めていただきたい。

まとめ

今回の研究会では、サントリー様の「水育」の取り組みを通して、学校と企業との関わりの形を見ることができました。「水育」自体、サントリーという企業の歴史に連綿と続く精神を柱に添えた取り組みであり、「水育」というプログラムから企業自身の姿をみたような気がしました。
また新学習指導要領に組み込まれた「生活や社会との関わり」という項目については、具体的にどのように展開していけばいいのか苦慮している先生方も多いと思いますが、今回のサントリーのお二方の話を聞いて、積極的にアクションを起こせば、地域の身近な企業とも連携することができる可能性も大いに感じました。
 
小林章浩様 … サントリーホールディングス株式会社CSR推進部長
市田智之様 … サントリーホールディングス株式会社サステナビリティ経営推進部課長
 
サントリー公式HP:
https://www.suntory.co.jp
サントリー「水育」HP:
https://mizuiku.suntory.jp