2020.07.22 Wed

動画編集は怖くない。基本の2ステップと自分に合った動画編集ソフトを押さえる。

神奈川県の高校にてお勤めの若手先生(K先生)へのインタビュー。

オンラインを中心とした1学期

小田:今日は神奈川県の高校で、2年生の担任をされているK先生にお話を伺ってまいります。まもなく1学期が終わろうとしていると思いますが、まずはじめに4月以降、どのような経過をたどられたのか教えてください。

K先生:4月7日に入学式をしたのですが、その翌日から6月第1週までオンライン授業を行いました。6月2週目から分散登校が始まり、当初の予定では7月6日から一斉登校の予定だったのですが、社会情勢を鑑み1週間延長の後、7月13日から一斉登校が始まりました。

小田:オンラインを中心とした1学期だったことと思います。オンライン授業を実施する際、課題の配信や管理等を行うためのアプリケーションは何を使われているのでしょうか。

K先生:基本的にはGoogle Classroomを使用しています。Google Classroomを用いて課題を配信し、成績もつけていくと、あとで点数が一覧で見れることは便利だと感じています。

小田:授業の中心を担うアプリケーションとしてGoogle Classroomを使用されている他、別のアプリケーションやオンラインサービスも併用されているのでしょうか?

K先生:私個人の授業では、YouTubeを活用しています。具体的には、自分で作成した動画を限定公開にしてYouTubeにアップロードし、それを課題として配信しています。動画編集ソフトは「Final Cut Pro X」を使っています。私はMacを使っているので、「iMovie」を使って編集することもできるのですが、字幕にこだわろうと思うと、「Final Cut Pro X」の方が自由度が高く、魅力的でした。

小田:動画づくり(教材づくり)へのこだわりが素敵です。

K先生:生徒にとってできる限り見やすく、飽きない動画を作らなければいけないと思っているので努力しています。編集技術についてはまだ至らないところもあるのですが、自分の頭の中にあるイメージが再現できるだけのアプリケーションは準備してある方が良いのかなと感じています。

小田:この1学期は新しいアプリケーションをゼロから勉強して、使い慣れていかなければいけなかった印象をもちます。

K先生:3年前から生徒にはiPadを配布していたので、Google Classroomについては今回が初めての使用ではなかった点がありがたかったと感じています。ただ、「動画を授業に使う」ということはこれまでなかったので、それについては勉強しました。

動画編集の基本は2ステップ

小田:今、全国的に一斉登校が再開している一方で、いつまた休校期間がやってきて、オンライン授業をしなければいけなくなるのか、先が読めないとも思います。もしもに備えて、動画編集をこれから試してみたい先生も全国には数多くいらっしゃると感じていますが、K先生は動画編集をどのように勉強されたのでしょうか。

K先生:私は最初、動画の編集方法を紹介している何人かのYouTuberの動画を見て勉強しました。そこでとあるYouTuberが言っていたのですが、「まずは動画を撮ってみて、自分がしゃべっていない間の部分をカットする」ということが動画編集の第一歩だそうです。

小田:動画中の不要な部分をカットするときの分かりやすい考え方ですね。どこをカットしてよいのか、基準があるのとないのでは大違いです。

K先生:その後、「しゃべった言葉の中で重要な部分について字幕をつける」ことで、基本的な動画編集は完了というものでした。それ以外にも、例えば動画に効果音やBGMをつけることもできますが、それはあくまでも追加要素であって、絶対必要なものではないと考えると、動画編集は意外とシンプルなものに思えてきます。

小田:撮影した動画について、「①自分がしゃべっていない部分をカットする、②しゃべった言葉の中で重要な部分について字幕をつける」ことで動画編集が完了。この2ステップを覚えておくと良さそうですね。

K先生:このもっともシンプルな動画編集に限って言えば、Macであれば「iMovie」で十分ですし、Windowsの場合は「フォト」というWindows10標準搭載の無料ソフトで問題ありません。

小田:K先生のお話を伺っていると、動画編集は怖がらなくても良いんだと感じました。まずは、パソコンの中に標準搭載されている動画編集ソフトがあれば、そこから第一歩を踏み出してみるのは良いかもしれません。

今だからこそ、生徒を取り残さない授業の工夫

K先生:今、学校としては一斉登校が始まったのですが、現状ではまたいつ休校になるのか読めないため、私の授業では5月同様の課題配信型の授業を延長することにしました。方法としては、事前にGoogle Classroomを通して課題を配信しておき、その課題は学校に登校して授業時間中に取り組む、というようにしました。

小田:生徒の主体性に依存する課題配信型の授業だと、その取り組み(学びの質)に差が出てくると思うのですが、一斉登校ができているうちに課題への取り組み方を指導しておくことは、再度休校になったときのことを思うと有効と感じました。

K先生:そのため、生徒は授業中にiPadを活用して課題に取り組んでおり、私の役目としては生徒からの質問があればその場で回答するというものになっています。これまでには、生徒たちの課題が完成したらGoogle Classroomに提出させ、クラス全員の課題のURL一覧を生徒に配り、生徒一人一人がクラス全員の課題を見てお互いを評価しあう、という活動をしました。

小田:とても興味深い活動です。

K先生:その他にも、今回初めて挑戦してみた授業スタイルとして、事前に作成した動画に授業の基本的な進行を任せてしまい、私は困っている生徒の個別フォローに入るという、「一人TT」を試みました。

小田:これはまさに動画での授業進行が可能になったからこそ試すことのできた、とても現代的で実験的な授業スタイルですね。

K先生:正直、事前準備にとても時間がかかるという意味で課題は残ったのですが、ただ、全く新しい授業スタイルの模索が容認されている今だからこそ、生徒の学びの質向上のための試行錯誤にとても可能性を感じています。

小田:ちなみに、K先生は動画の編集にはどの程度の時間をかけていらっしゃるのでしょうか。

K先生:10分の動画を編集するのに2時間はかかってしまっています。もちろん、単純に動画をカットして、数か所に字幕を入れる程度であればそんなに時間はかからないのですが…。動画を作成するということは、生徒の前で直接の授業ができないという前提があるので、そうなると今まで以上に手間をかけて、丁寧に向き合わないと、生徒が主体的に学びに向かってくれるような仕掛けにはなりづらいと感じています。いかに生徒を取り残さない授業ができるか、という想いは大切にしています。

全国の先生方へのメッセージ

小田:最後に、全国の先生方にメッセージがあればお願いします。

K先生:もう一度休校期間が来るかもしれないという不安は、全国の先生の共通認識だと感じています。そう思うとオンラインの技術は、今後、必須になってくると思います。ただ、「動画を作らなければいけない」と思うと、どうしてもハードルが高く感じてしまうかもしれません。そんなときは、「既存のものを上手に利用しながらオンラインに関わっていく」ということも一つの方法だと思います。つまりは「無理せず、できるところからオンラインに関わっていってほしい」というメッセージになりますでしょうか。

小田:K先生、大変お忙しい最中、インタビューにお力添えをいただきありがとうございました。

話し手

K先生 … 神奈川県にて高校教諭。2年生担任。

聞き手/ライター

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

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