2021.03.11 Thu

卒業式を終え、来年度へ向かう。

神奈川県の高校にてお勤めの若手先生(K先生)へのインタビュー。

昨年と比べた、今年の卒業式。

小田:いよいよ2020年度も残りわずかとなってきました。そこで、この1年間を振り返るような視点を含むインタビュー記事をお届けしたいと思い、2020年7月24日にインタビュー記事を公開させていただいたK先生に、今一度、ご協力をいただくことにしました。
 早速ですが、K先生の学校では、もう卒業式を終えられたとのこと。卒業式はどのように実施されたのか、まずはお話をお聞かせください。

K先生:私の勤務校では、3月1日に卒業式を終えました。
 昨年のことを振り返ると、2月の末からオンラインを中心とした学習方法に急遽切り替わり、その後すぐ、3月2日が卒業式でした。当日は保護者の方のご参加をお断りし、卒業生と教員のみ、音楽の演奏等もありませんでした。
 それに比べ、今年は保護者の方のご参加が1家庭につき1名まで可能となり、また例年の卒業式で流していた音楽は、音楽科の教員が中心となって事前にレコーディングをしたものを流すこととしました。

小田:レコーディングというのは、生徒も一緒に行ったのでしょうか。

K先生:1つの教室をレコーディング室のようにし、そこで、一部の生徒が一人ずつ録音をしていきました。何人もの生徒たちが歌ってくれた音源は教員側でミキシングして、あたかも合唱をしているかのように仕上げました。

小田:きっと、コロナ禍で注目された「テレコーラス」に近いものですね。作成された音源が卒業式に彩りをもたらしたことと思います。

K先生:「校歌斉唱」とアナウンスしつつも、生徒たちは歌うことなく、作成した音源を流すという不思議な感覚でもありました。
 この音源については作ってよかったと思う一方で、例えば「仰げば尊し」を卒業式のあの場で、自分の声で歌うということがいかなる意味をもっていたのかということを考えさせられる機会にもなりました。過去に録音したものを「聞く」のではなく、卒業式の場にいる自分の思いとともに「歌う」ということは、生徒たちの卒業式体験に少なからず影響をしていると思いました。

小田:改めて、昨年と比較して、今年の卒業式はどのような印象でしたか。

K先生:1家族につき1名とはいえ、保護者の方に見守っていただきながら卒業式を行えたこと、また音楽を流すことができたという意味で、例年通りでなくとも、とても良かったと思いました。保護者の方にとっては、やはり式の様子を写真に撮ることができたため、大切な記録にもなったと思います。

1年間、とても長かった。

小田:さて、2020年7月24日にインタビューをさせていただいてから今日を迎えるまで、本当にたくさんの特別なことがあったと思います。私個人としては、今までとは違うことの連続だったため、この1年間はとても長かったように振り返っていますし、ようやく今年度が終わるという思いです。

K先生:この1年は長かったように私も思います。
 今年度はまず自宅学習からスタートし、6月頃に登校が再開、年が明けて緊急事態宣言が出てからもう一度自宅学習に切り替わり、高校入試後に登校を再開するという流れでした。本校からはコロナの感染者が出なかったので、それは本当に良かったです。一方で、コロナ対応をされた学校は本当に大変だったことと思います。

小田:対面とオンラインが切り替わるということが、特殊なご負担だったように拝察します。

K先生:その通りですね。ただ、前回のインタビュー時にもお伝えさせていただきましたが、私の授業は、オンラインでも対面でも、どちらでも対応できるように準備をしていたので、大きな混乱は回避することができました。

小田:子どもたちの様子はどうでしたか。

K先生:よく言われていることでもありますが、オンラインで授業をしていた時期もあるため、「生活リズムが崩れて大変だった」、「やる気が出なかった」、「時間はたくさんあるけどだらだらしてしまった」など、そうした意見が多かったように思います。
 毎日登校する、ということが生活リズムをつくっていくことを生徒自身が身をもって体験できたと思いますし、私個人も身に染みました。

小田:この1年を経験した子どもたちは、「ゆとり世代」等のような、独特な名称を社会から与えられてしまうのではないかという、ある種の危惧もあります。

K先生:その点に関連できるとすれば、もともと学校に来ることに困難を感じていた生徒がオンラインでの自宅学習によって授業に参加することができた一方で、登校再開に伴って、今まで以上に学校に来ることへの困難を強く感じたということもありました。加えて今年度については、出席管理についても難しさを感じました。この辺りは、他の学校の先生方がどのように対応をされたのか、ぜひお話を伺ってみたいところでもあります。

今年度の気づきを来年度へ活かす。

小田:K先生は今年度、たくさんの新しい挑戦をされてきたことと思います。その中にはやってみたからこそ分かった課題もあると思いますが、特にオンラインでの授業実施についてはどのようにお考えでしょうか。

K先生:分散登校時は対面+配信(Zoom)での授業実施をしたのですが、その際、どうしても授業中は対面の子に向かって授業をしてしまう傾向が私自身にあったため、Zoomで授業に参加してくれている子が取り残されているような感覚を覚えていないか、心配に感じたことがありました。
 加えて、Zoomの画面越しに黒板の文字を見ることには困難が残ることも感じており、そうした細かな積み重ねが、生徒たちに取り残されている感覚を創出しやすいとも思いました。

小田:「誰ひとり取り残さない」という視点について、ハイブリッド型の授業には、引き続き丁寧な検討が必要ということですね。

K先生:ただ、例えば配信型の授業についてはメリットも感じました。それは「繰り返し閲覧できる」という特徴です。そして、こうしたメリットを子どもたちにも感じてもらうための工夫としては、やはり教員自身が画面上に映っているということがポイントに思えます。やはり、知っている先生が動画に現れるのとそうでないのは、動画を見たいと思えるかどうか、という動機づけに影響すると予想しています。

小田:動画として固定化された映像だとしても、先生への想いが自然に湧きおこり、それが生徒と先生の関係性をつないでいく機会であるという意味では、貴重なコミュニケーションの場とも言えるかもしれません。
 来年度については、今年度発見した課題を応用できる機会はあるのでしょうか。

K先生:来年度は、おそらくオンラインでの授業を実施する機会はぐっと減ると感じています。その意味で、例えばグループワークを効果的に活用した授業づくりを今まで以上に丁寧に検討していくことや、生徒同士の多様なつながりの機会を創出することは応用として考えられると思います。
 加えて、オンライン授業に限らない視点でいうと、メンタルケアについては自分から積極的に取り入れていきたいと感じています。この1年間、やはり精神的な負荷は避けられないものでした。ただし、そうした状態をただ受け入れるのではなく、積極的に解消し、前向きに働き続けられるような環境を自分で築いていくことの大切さを実感しました。

全国の先生方へのメッセージ

小田:最後に、全国の先生方へメッセージをお願いします。

K先生:まだまだ通常営業とはいかないと思います。そうした中で、健康の価値は今まで以上に大きくなっていると思いますので、健康を第一に過ごしていただけると嬉しいです。

小田:K先生、今日はありがとうございました。

話し手

K先生 … 神奈川県にて高校教諭。2年生担任。

聞き手/ライター

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

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