2021.10.29 Fri

業務効率化はシングルタスクから。Googleカレンダーをタスクマネジメントツールに。

神奈川県の高校にお勤めのK先生へのインタビュー。
  • 文化祭(オンライン)のプログラムには、URLを仕込むことで動画にアクセスしやすくした。
  • Googleカレンダーへの入力は色分けをして、シングルタスクを目指す。
  • 紙でもGoogleフォームでも、試験結果はほとんど変わらない。業務効率化の視点から試験方法を見直す可能性。
  • オンラインでの文化祭はプログラムにひと工夫。

    小田:今回はPOWER FOR TEACHERSのインタビュー企画に3回目のご協力をいただいて、K先生にお話を伺ってまいります。

    K先生:1回目はオンラインでの授業実施が言われていた頃(2020年7月24日)のため動画編集の基本ステップについて、2回目は歌を歌わない新しいスタイルの卒業式についてお話をさせていただきました。

    小田:K先生は、神奈川県の高校にお勤めで、昨年は2年生の担任、今年は3年生の担任とのこと。とりわけ、今月開催された文化祭について教えてください。

    K先生:当初は例年通り、対面での文化祭を予定していたのですが、神奈川県は8月の新規陽性者増が顕著だったこと、またそれに伴い夏休み明けはオンラインでの学校再開となったことから、文化祭もオンラインでの開催に急遽切り替えました。

    小田:実施方法について、可能な範囲で教えてください。

    K先生:まず、各クラスや部活動が文化祭で発表しようとしていたことをテーマに動画を作成しました。集約したところ35本程度の動画が集まり、つぎはそれをオンラインクラウドにアップロードし、動画を閲覧可能なURLを確定させます。あとは、動画を作成したクラスや部活動ごとに、ポスター画像とタイトル、紹介文を集約して、ポスター画像部分をクリックすると動画に飛べるようURLを仕込んだプログラムを作成し、それをPDF化したものを期間限定で公開しました。プログラム作成には、私はPages(Apple社)というMac用の文書作成ソフトを使用して作成しました。

    小田:紙のプログラムの場合は動画へのアクセスのためにQRコードを掲載するのが流行に思いますが、電子データの場合は、URLの埋め込みも可能になるため、クリック1つで動画へアクセスできること、便利に思います。

    K先生:今回の文化祭に関する生徒の感想は現在集約中ですが、対面での文化祭のときには感染症対策の観点から実施できなかった内容(演劇や歌唱を伴うもの等)が動画を用いたオンラインでの発表になると実施できたということもありました。地域の方との触れ合いや他クラス、部活動の出しものを直接味わえる、にぎわいある文化祭とはいきませんでしたが、1つの試みとして意義ある文化祭になったと振り返っています。

    Googleカレンダーでタスクマネジメントを。

    小田:K先生へのインタビューの2回目では、教員自身のメンタルケアの重要性についてお言葉がありました。その内容を詳しくお伺いしたく、恐れ多くも3回目のインタビューをお願いした次第です。

    K先生:前回と重複する部分もあるかと思いますが、コロナの出現に伴って、全国的に新しい対応が次々に求められ、特にオンライン授業がスピード感をもって現場に求められるようになったことで、私自身、それに伴う疲弊は避けることができませんでした。いかに業務を効率化していくか、という議論はもとよりありましたが、制度を変えるといった大きな議論よりは、今自分で何ができるかという身近な議論をしなければメンタルケアに時間も割けないと思い、特に業務の効率化について自分なりの方法を模索し始めました。

    小田:例えば、企業と学校では労働環境が異なるように思うのですが、業務効率化のための考え方も異なるのでしょうか?

    K先生:基本的な考え方として、いくつもの本で言われているのは「マルチタスクではなくシングルタスクを徹底すること」です。これは企業も学校も変わらないと個人的には思います。一方で学校現場は、前日夜に翌1日の予定を立てたとしても、その通りに実行できることはほとんどなく、むしろ、急な対応をしなければいけないことの方が多いと思います。その場合、どうしても事前に立てたスケジュール通りには1日は過ぎていきませんし、1つのことに集中するよりも、「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」という思考になりやすく、マルチタスクのようになってしまうと思います。ただ、私の実感として、マルチタスクはやはり効率が悪く、可能な限りシングルタスクを目指したいと考えています。

    小田:シングルタスクは「この時間はこれに集中する」という考え方ですが、たしかに様々な業務がある先生だと現実的に難しいところもあるかもしれません。でも、だからこそまずはその日のうちにやらなければいけないことの優先順位を可視化するため、タスクマネジメントが重要だとも言われていますね。

    K先生:個人的には、タスクマネジメントツールとしてGoogleカレンダーを使っています。私の実際のカレンダーを模して画像を作ってみました。

     基本的には色に意味を持たせています。紫色は授業、緑色はHRや会議、部活などの校務、赤は単発の用件です(上記画像には反映していませんが、私用は水色で入力しています)。紫色と緑色で示しているものは、基本的には時間を動かすことができない内容のため、その時間に対応することが求められるものです。新しい仕事が発生したときには、緊急度に応じて、カレンダーを見ながらいつ対応するか考えるようにしています。

    小田:時期によっては、K先生で言う赤色の、単発の用件が多くなることがあると思います。

    K先生:仮に1つの仕事は15分と考えて、同じ時間帯に2つの仕事が被らないように調整していきます。どうしてもその日に対応することが難しいと判断した場合は、翌日以降のカレンダーの空きに移動して、余裕をもって対応するようにします。

    小田:私たちの体力や集中力は有限で、それを理解したうえで仕事をパフォーマンス高く実行できることは、自己管理ができている状態と言えます。私自身もタスク管理にはGoogleカレンダーを使っていますが、K先生とは違う方法で使用しています。初めての方はK先生の方法を一部からでも、無理のない範囲で真似するところから始めてみるのはおすすめです。

    全国の先生方へのメッセージ

    小田:最後に、全国の先生方へ一言メッセージをお願いします。

    K先生:業務効率化のためのアプリ等は、今回ご紹介したほかにも、Google フォームも便利です。例えば、小テストから定期考査まで、Googleフォームでテストをすることが可能であれば、Googleフォームにはあらかじめ回答を入力しておくことができるため、回答されたそばから自動採点がなされ、1枚1枚、生徒の答案を丸付けしていた時間が省けます。自由記述の箇所だけ自分で採点するということもできるため、記号問題だけを自動採点とすることも可能です。
     ちなみにですが、紙での試験、Googleフォームを用いた試験、Googleフォームを用いた試験で自由に調べながら回答してよいスタイルなど、様々試したところ、顕著な差が見られないことが分かりました。紙のテストで点数が取れていた子がGoogleフォームになることで点数がとれなくなることもほぼなかったですし、逆に、紙のテストで点数が取れなかった子がGoogleフォームになることで点数が伸びたということもなかったです。回答のしやすさや慣れなどの影響が多少なりともあるにしても、もしも生徒の学びを計る方法として大きな差異がないのであれば、業務効率化の視点から、試験の方法は見直しても良いのかもしれないと思っています。こまめにGoogleフォームでの試験を実施していくことで生徒が順応していく姿も目の当たりにしています。計りたい力が計れる試験かつ業務効率化にもなる方法を引き続きブラッシュアップしていきたいと思います。

    小田:K先生、今日はありがとうございました。

    話し手

    K先生 … 神奈川県にて高校教諭。3年生担任。

    聞き手/ライター

    小田直弥 … POWER FOR TEACHERS編集長。東京学芸大こども未来研究所学術フェロー。国立大学法人弘前大学助教。

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