2021.01.15 Fri

潜入レポート:第89 回授業と子どもを考える会『新年の会』

「第89 回 授業と子どもを考える会『新年の会』」(1月11日)の潜入レポート。

 今回は「第89 回 授業と子どもを考える会『新年の会』」に参加させていただきましたため、その内容をレポートします。
 「授業と子どもを考える会」は、春の会、夏の会、新年の会と年に3回開催されており、平成3年度を皮切りとして今年で30年目を迎えようとしている会です。学校の中にある様々な場面やそこにいる子どもたちを通して、学びや育ちを、校種にしばられることなく、多くの先生と一緒に考えていくことを活動の主としています。コロナの影響から、2020年度の夏の会は初めてのオンライン開催となり、今回も引き続き、オンラインでの開催となりました。
 会の流れは毎度、「1.自己紹介」、「2.話題提供者による発表ならびに参加者全員での意見交換」、「3.次回の予定決め」ととてもシンプルです。それでは、当日の流れに沿って、レポートを進めていきます。

「自己紹介」という名の貴重な「情報共有タイム」。

 この会では、話題提供者による発表とそれに対する意見交換が1つの目玉ではあるのですが、さらなる特徴として「自己紹介」がとても充実しており、様々な学校の先生がお集まりになられることもあり、貴重な情報交換の場として機能しています。参加者は小学校、中学校、高校、大学など、様々な教育機関で音楽を教えていらっしゃる先生方ばかりです。今回は、北海道から参加くださった先生も含め、計13名の先生方が1つの画面に集いました。
 2021年は、緊急事態宣言とともに幕開けとなったこともあり、それぞれの先生が自己紹介がてら、学校の状況や現状に対する思いをお話しくださいました。以下、その一部をご紹介します。(先生方のお名前は匿名とし、その横にお勤めの校種を記載しました。)

A先生:小学校
 私の学校は1月8日に始まりましたが、緊急事態宣言が出るということが分かっていたので、学級を2分割して、最初から分散登校としました。緊急事態宣言下は、「水曜日はオンライン学習(家庭学習)の日」と決めて、子どもたちは週に2日間の登校となりました。

B先生:大学
 闘いの日々がまだまだ続くのかと思うと、気が重くてしょうがないです。授業は対面とオンラインのハイブリッド型で実施しているのですが、対面で授業に参加する学生も徐々に増えてきていることから、実際に授業を行う部屋の他、もう1部屋ではスクリーン越しに授業をうける学生もおり、さらにオンラインからも学生が授業に参加している、という状況です。

C先生:高校
 私の学校は1月12日から新学期が始まるのですが、その前にコロナ体制での入試を経験することとなりました。ピリピリした状況でしたが、なんとか無事に終了できました。
 私の学校は、まだ分散対応はせず、一斉登校のまま進める予定ですが、部活動関係の朝・昼・放課後の活動は全て中止として、16時30分には一斉下校としています。
 合唱部が出場予定だった「春こん。」(東京春のコーラスコンテスト/主催:東京都合唱連盟)の延期が決まり、音楽系の部活動はいま、どこも厳しい対応が続いているかと思いますが、生徒のモチベーションをどう保つか、そして来年度の活動をどのようにするかが難しいと考えています。

D先生:中学校
 合唱ができなくなってしまったことはしょうがないのですが、特に今年の中3は歌う活動にアイデンティティを感じている子が多く、3年目にして初めて年賀状をくれた子のお年賀には「みんなで歌える日が来ることが待ち遠しいです!!」と書いてあったのですが、早速の緊急事態宣言となってしまいました…。高校では歌えると良いのですが…。

E先生:小学校
 吹奏楽器を用いた活動と歌唱活動について中止せざるを得なくなったので、3学期の学習内容を大きく切り替えるための準備を進めています。ただ、リコーダーに一切触れないということは難しいと思うので、吹かなくてもリコーダーの学びが深められるような資料作りを頑張っています。

F先生:小学校
 ここ最近、子どものメンタルが特に気になっています。ソーシャルディスタンスなど、たくさんの決まり事を守ることに疲れてしまって、開き直ってしまうような姿も見られ、もちろん教員としてはそうした子どもに指導をしなければいけないのですが、子どもも疲れているので、指導によって教師と子どもの関係が崩れやすい状況が生まれていると思いました。その結果、学級崩壊の危険を感じているクラスもあります。

話題提供から始まる意見交換。

 各先生のお話しが終わり、今回の話題提供者にバトンタッチとなりますが、この会の話題提供は手前味噌ながらも私が担当させていただきました。
 これまでの会での話題提供者は、音楽の授業実践をご紹介くださったり、授業づくりのヒントになる視点を紹介くださることが多かったのですが、今回は、私がこれから新しく担当する研究の概要を共有し、その内容について意見交換をさせていただくこととしました。

 テーマがまず難解なのですが、「音楽の授業は、個人もしくはグループに、科学的、宗教的な信念、価値観、行動の変化をもたらすか?」としました。
 この研究のリーダーはイギリス人の先生で、日本を含む東アジアにおける宗教的行動をご研究されています。この先生によると、日本人はいくつかの点で、世界から見て特徴的であるとのことです。

 イギリス人の先生から見ると、日本人の宗教に対する態度は不思議そのもので、果たして、いったいこうした日本人らしい考え方や態度が、自然発達の中で、いつ、どこで、どのように育まれていくのかがとても興味深いとのことでした。こうした関心に対し、特に、日本の公教育でこのような日本人らしさがどのように醸成されていくのかを研究してみたい、ということで始まったのが今回の研究で、こうした流れを話題提供時にご紹介しました。

 このテーマに対して、せっかく、様々な学校で音楽を教えていらっしゃる先生方がご参集されていることもあり、では音楽の授業の中ではどのようにしてこうした態度が育まれる可能性があるのか、もしくは音楽の授業ではないところで育まれているのかなど、自由にご意見をいただくこととしました。一部のご意見を、ご紹介します。

 このような意見交換が1時間弱続き、会は次回の開催日時、話題提供者を決め、閉じられました。

総括

 約2時間にわたる会もあっという間に解散となり、接続が切れるといつもの現実へ引き戻されるようでした。ただ、会の終了後、4人の先生からメールで意見交換時のテーマについて追加でのご意見をいただき、こうした会を通して、先生方とのつながりが濃くなり、またお会いできる日が一層楽しみになりました。いただいたメールの中には、コロナ対応に追われる毎日だからこそ、研究について考える時間をもてたことが嬉しかったとの感謝の言葉もありました。
 次回の開催は4月10日(土)です。次回の話題提供者もとてもユニークな取り組みをされている先生がご担当くださいます。ご参加を希望される方は、東京学芸大学附属世田谷小学校齊藤豊先生へお問い合わせいただく他、私(小田:ypmdj309@u-gakugei.ac.jp)宛でも構いませんため、お気軽にご連絡ください。
 最後に、こうしたオンラインコミュニティは、全国どこからでも参加できることが大きな特徴です。お休みの日にゆっくりご自宅で過ごされることも大切ですし、たまにはこのような会で刺激をもらうことも良いかもしれません。

記録

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

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