2020.10.22 Thu

見た目は変わっても、変わらないもの。
今、学校は楽しいです。

現役中学2年生(香川県)とその保護者へのインタビュー。

やっぱり、学校に行きたい。

小田:コロナが学校現場への直接の影響をもたらし始めてから半年以上が経ちました。このコーナーでは全国の先生方や教育関係者へのインタビューを通して、その時々の「今」を常に伺い続けてきましたが、さらに私がずっとお話ししてみたかったのは、子ども自身です。
 そこで今回は、香川県にお住いのMさん(中学2年生)とそのご両親にお話しをお伺いしていきます。

Mさん:緊張しています。よろしくお願いします。

小田:早速ですが、今回のコロナでは初めてのことがたくさんあったと思います。4月頃からの学校の様子を振り返りながら、教えてもらえますか。

Mさん:4月の最初の方は、本当にちょっとだけ分散登校という形で学校に行きましたが、すぐにお休みになってしまいました。5月の中旬あたりから午前授業のみの分散登校になって、その後、学年ごとに日にちを分けて登校しました。5月末には、全員揃っていつもどおり午後の授業も始まりました。ただ、給食だけは全学年一緒にランチルームで食べるのではなく、3年生だけがランチルーム、1、2年生は教室で、全員前を向いて食べることになりました。今もこの給食のスタイルは続いています。

小田:自粛期間中の宿題はどんなものがあったか覚えていますか。

Mさん:結構でかいものがありました。

小田:「でかい」というのは(笑)

Mさん:いつもだったら夏休みで出るような宿題のことです(笑)習字や作文、読書感想文、ポスターなどの課題のほか、授業の予習も宿題として出ていました。休みが長かったおかげでやりきりましたが、結構大変でした。

小田:コロナで突然発生した休みについて、正直、どう思った?

Mさん:最初は「休めてラッキー♪」くらいに思っていました。ただ、宿題はもちろん予習なども全部自分でやらないといけなかったのと、ずっと家にいるのもちょっとずつ暇に感じてきていたので、最後の方は早く学校に行きたかったです。

夏休みは料理。おいしくできました

Mさん:1学期が終わって、夏休みは夏休みで新しい宿題が出たのですが、家庭科の宿題では料理を作りました。春雨ときゅうりの酢の物、ピーマンのナムル、お味噌汁、チーズや梅としそを挟んだチキンカツなどです。

〈Mさんの手作りごはん〉

小田:僕よりも料理が上手だと思いました。栄養のバランスも考えられていて、充実した御飯ですね。お母さん、お父さんにとっては、お腹だけでなく心も満たされる格別な時間だったと思います。

Mさんの母:しそは庭でとれたもので、ピーマンやキャベツ、きゅうり、わかめはおばあちゃんが畑で作っていたり、海でとれたものを干して送ってくれたものです。その意味では、みんなの想いが詰まった御飯になりました。

学校での新しい日常。

小田:さて、少し視点を変えて、今の学校でのコロナ対策について教えていただけますか。

Mさん:私は保健委員をしているので、答えられそうです。まず毎朝、自宅で検温をしてから登校するのですが、検温を忘れてしまった生徒は学校で検温します。自転車通学の生徒は、駐輪場に入ったらすぐにマスクを着けるようにしていて、そのあと、もちろん授業中も着けたままです。体育の時だけは基本的にマスクを外しています。
 音楽や理科など教室移動がある場合と給食の時は、その前後に手洗い・うがいをしています。
 授業中は、生徒と先生は向かい合うので、教卓にアクリル製の板が置かれていて、先生はマウスシールドを着けて授業をしています。生徒の方は、音楽の授業の時だけ、各自の机に囲いが置かれています。
 友達との会話については、密にならないようにとは言われていますが、会話自体を控えるようにとまでは言われていません。あとは、今まで行っていた全体集会はなく、各教室でモニター越しに行うスタイルに変わっています。

小田:かなりいろいろな対策がなされているのですね。学校行事にもコロナの影響は出ていますか。

Mさん:音楽祭と体育祭は中止になってしまいました。でも、2年生の校外学習や3年生の修学旅行はありました。私たち2年生は校外学習で徳島の大塚美術館や徳島動物園に行きました。移動はバスでしたが、前の席のところにビニールの仕切りが吊るされていて、飛沫対策がされていました。修学旅行については、私は2年生なので聞いた話ですが、例年と異なり宿泊は無しになり、一日目は日帰りで広島、もう一日は日帰りで岡山に行ったそうです。

小田:え!ということは、学校に集合してから瀬戸大橋を通って広島に行き、その日のうちに帰ってきて、明くる日にまた学校に集合してから瀬戸大橋を渡って岡山に行き、その日のうちに帰ってきたということですか!?驚きが隠せません…。
 部活動の状況はいかがですか。

Mさん:今はもう、ほとんどの部活動がいつも通りに活動できている状況です。私はソフトボール部に入っているのですが、屋外で行うソフトボール部に限らず、屋内での卓球部も、吹奏楽部なども活動は再開できています。
 ソフトボール部では新人戦を終え、今は県大会に向けて練習に励んでいます。ただ、大会では応援について制限がかかっていて、拍手や「がんばれー!!」などの一言程度なら声を出してもいいのですが、応援歌などは禁止になっています。

これまでと、今と、これから。

小田:率直に、今、学校は楽しいですか。

Mさん:うーん…。楽しいです。

小田:少し考えている様子でしたが、どんなことを考えていたんですか。

Mさん:「前と変わることって何かあるかな?」と考えていました。マスクを着けたり、手洗い・うがいをこまめにしたりなど、見た目は少し変わったけど、授業も普通に受けることができているので、それほど変わっている感じはしていません。

小田:本質的には変わっていないということですね。学校生活では特に何が楽しいですか。

Mさん:部活です。1年生の時は先輩の指示に従って自分のことだけをやっていればよかったのですが、今はキャプテンを務めているので、個性の強いみんなをまとめていかなければなりません。大変な役割ですが、それでも部活はとても楽しいです。

小田:将来の夢はありますか。

Mさん:まだ具体的にはありません。ただ、2年生になって進路学習の時間が多くなり、その中で感じていることは「人のためになる仕事がしたい」ということです。まだ漠然としていますが、医療関係や貧困支援などに興味があります。

小田:具体的になりたい職業が見えてくるのはもっと先でも良いかもしれませんが、いま興味があると感じているものへの感覚は宝物ですから、大切にしてほしいです。これからも自分の可能性を信じて頑張ってくださいね。心から応援しています。

両親から見たコロナ禍の教育。

小田:せっかくなのでMさんのお父さん・お母さんにもお話をお伺いさせてください。
 今、コロナだけでなくギガスクール構想も相まって、子どもたちを取り巻く教育環境に様々な変化が訪れました。保護者の目線から、子どもたちの今について、お感じになられていることなどありますでしょうか。

Mさんの父:一番面白かったことは、タブレットなどの機器に対する子どもの順応力です。学校が休校になったタイミングで、密になるという理由で娘が通う塾もお休みになりました。その頃、並行してタブレットを使用した通信教育教材も始めましたのですが、小さい頃からゲームなどでそういった機器に馴染みがあるためか、紙の問題集を使うよりも面白がって自ら進んで勉強に取り組む姿を見ることができました。今の子どもはそのような新しい技術に馴染む土台がすでにあるのかなと感じましたし、コロナ禍における生活スタイルにもマッチしているのかなと思いました。
 例えば、昔は良いコーチに出会えるかどうかが勉強に限らず、何事においても運命の分かれ道でしたが、今はYouTubeやSNSなどで世界中の有名な人に簡単にアクセスできます。それこそ小学1年生の子でもプロ野球選手の練習方法をマネすることができる時代になっています。今後、これらICTの活用によって、学校で先生から直接学ぶのに並行して、学校以外での教育機会が増え、教育の質も総合的に上がっていけるのではないかなと感じているので、もっと力を入れて進めていただけるといいのかなと思っています。

Mさんの母:コロナによる休校期間中は子どもがずっと家にいることになり、今後の学校生活などに対する不安がありましたが、学校の先生方が丁寧にフォローしてくださっているので、乗り越えていくことができている印象をもっています。特に、休校中、何回も連絡網を通じた連絡をもらったりして、子どもも不安だったろうけど、先生方のおかげで安心して過ごすことができたのかもしれません。

小田:休校期間中も学校の先生方は、児童・生徒の心身の健康状態の管理、宿題や学校再開時の対応検討など様々な業務に忙殺されていたと聞きます。その中でも先生方は懸命に子どもたちへのフォローをしてくださっていたこと、感謝しかありません。

全国の先生方へのメッセージ

小田:最後に、全国の先生方へ一言メッセージをお願いします。

Mさんの父:休校期間中を振り返ると、こちらが思っている以上に先生方が子ども一人ひとりのことをよく見て、それぞれに対して、適切なメッセージやアドバイスを発信してくれていました。先生のすごさを、子どもを持つ親になってとても実感しました。

Mさんの母:先生方は子どものことをよく見てくださっているので、とても安心して子どもを預けることができています。とても感謝しています。

Mさん:私の先生は、生徒のことを一番に見てくれているので、それがとても嬉しいです。コロナに負けずに頑張ってください!

小田:皆さん、今日はありがとうございました。

話し手

Mさん … 香川県在住の中学2年生。ソフトボール部キャプテン。

聞き手

小田直弥 … NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員。

ライター

福島達朗 … NPO法人みんなのことば事務局長、部活動指導員(渋谷区, 吹奏楽)、フリーランスのステージマネージャー

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